ひとんちの庭

すきなことをすきなように。できればつつましく。

2023年のエンタメ記録

同一演目の複数回鑑賞はまとめて。突然スポーツ観戦が入ってくるという思いもよらぬ展開に、我ながらウケている。まあスポーツもライブエンタメの一種だし。その影響で観劇・映画鑑賞ともにここ数年で類を見ないほど激減しましたね…チケット代の高騰も無関係ではないが。

<観劇>
おやすみ、お母さん@シアター風姿花伝
木ノ下歌舞伎『桜姫東文章』@あうるすぽっと
パラドックス定数『四兄弟』@シアター風姿花伝
劇団☆新感線『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇』@東京建物Brillia HALL
イキウメ『人魂を届けに』@シアタートラム
ある馬の物語@世田谷パブリックシアター
兎、波を走る @東京芸術劇場プレイハウス、新歌舞伎座博多座
桜の園@パルコ劇場
ムーラン・ルージュ!ザミュージカル@帝国劇場
スリル・ミー(松岡・山崎ペア)@東京芸術劇場 シアターウエス
劇団☆新感線『天號星』
ねじまき鳥クロニクル東京芸術劇場 プレイハウス
イキウメ『無駄な抵抗』@世田谷パブリックシアター

<配信・映像>
スリル・ミー配信(木村・前田ペア)
NTL『レオポルトシュタット』(トークイベント付)
劇団☆新感線神州無頼街』

<関連イベント>
トークイベント「劇場を開くには?」@神保町PARA
「芸術監督公開トークシリーズ Vol.3― 創作の場としての公共劇場 ―」@KAAT
「芸術監督公開トークシリーズVol.4 ー舞台芸術の入口をつくる~開かれた公共劇場をめざしてー」@新国立劇場

<ライブ>
EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2023 ~Twilight Cinema~@新潟県民会館、東京ガーデンシアター

<映画>
THE FIRST SLAMDUNK
岸辺露伴ルーヴルへ行く
シン・ゴジラ:オルソ
鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

<バスケット観戦>
千葉ジェッツvs信州ブレイブウォリアーズ
千葉ジェッツvs仙台89ERS
千葉ジェッツvsシーホース三河
千葉ジェッツvs茨城ロボッツ
千葉ジェッツvs三遠ネオフェニックス(2)
@すべて船橋アリーナ

2022年のエンタメ記録

●1月
モダンスイマーズ『だからビリーは東京で』@東京芸術劇場
マーダー・フォー・トゥー@シアターコクーン
マーキュリー・ファー@世田谷パブリックシアター
消えていくなら朝(配信)
キングスマン:ファースト・エージェント(映画)

●2月
冒険者たち@KAAT 中ホール
宝塚歌劇団 花組公演『元禄バロックロック』(配信)
ザ・ファブル 殺さない殺し屋(映画)

●3月
冒険者たち@ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
奇蹟@世田谷パブリックシアター
呪術廻戦0(映画)

●4月
セールスマンの死@パルコ劇場
アンチポデス@新国立劇場小劇場
るろうに剣心 最終章 the Final(映画)
マーキュリー・ファー(配信)

●5月
EDGES@よみうりホール
EDGESアフタートーク(配信)
シン・ウルトラマン(映画)
犬王(映画)
地獄の花園(映画)
ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密(映画)

●6月
ガイズ&ドールズ@帝国劇場
バイオーム(配信)
宝塚歌劇団 月組公演『BADDYー悪党は月からやって来るー』(映像)
トップガン(映画)
トップガン マーヴェリック(映画)
犬王(映画)

●7月
劇団☆新感線『狐晴明九尾狩』(ゲキシネ
大駱駝艦『おわり』@世田谷パブリックシアター
導かれるように間違う@彩の国さいたま芸術劇場小ホール
2020@パルコ劇場

●8月
2020@キャナルシティ劇場/森ノ宮ピロティホール
千と千尋の神隠し(配信)
舞台 呪術廻戦(配信)
4人の芸術監督が集まって話し合ってみた~芸術監督ってどんな仕事?~(トークイベント配信)
物語なき、この世界(映像)
トップガン マーヴェリック(映画)

●9月
宝塚歌劇団 宙組公演『HiGH&LOW ーTHE PREQUELー』『Capricciosa!!』@宝塚大劇場
劇団☆新感線『薔薇とサムライ2 海賊女王の帰還』@オーバードホール
COLOR@新国立劇場 小劇場
EXILE LIVE TOUR2022 POWERofWISH@東京ドーム
ブレット・トレイン(映画)
HiGH&LOW THE WORST X(映画)
ソウルメイト/七月と安生(映画)
テオ・ヤンセン展(美術展)

●10月
トランスレーション・マターズ『月は夜をゆく子のために』@すみだパークシアター倉
パンドラの鐘NODA・MAP版/蜷川幸雄版/杉原邦生版】(映像)
ミュージカル刀剣乱舞 静かの海のパライソ 2021(映像)

●11月
しびれ雲@本多劇場
管理人@紀伊國屋ホール
宝塚歌劇団 宙組公演『HiGH&LOW ーTHE PREQUELー』『Capricciosa!!』(ライブビューイング)
ルードヴィヒ(配信)
ミュージカル『エリザベート』コンサート in シェーンブルン宮殿(映像)
GENERATIONS LIVE TOUR 2022 ”WONDER SQUARE”(ライブ)

●12月
建築家とアッシリア皇帝@シアタートラム
劇団四季アナと雪の女王』@四季劇場春
劇団☆新感線『薔薇とサムライ2 海賊女王の帰還』@新橋演舞場
大パルコ人④マジロックオペラ『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』(映像)
夜の女たち(映像)
RRR(映画)
ベイビーわるきゅーれ(映画)

うちにも長塚圭史ください! 開かれた“えんげき”『冒険者たち 〜JOURNEY TO THE WEST〜』

 神奈川県の公共劇場、KAAT神奈川芸術劇場を起点に、「KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト」と銘打って、神奈川県内6都市をキャラバン方式で巡る公演だ。ベースとなる題材は『西遊記』。「三蔵法師一行が天竺を目指す道中で、時空を超えて神奈川県に迷い込み、県内地域の伝説や昔話の世界を縦横無尽に旅する冒険譚」という、わかるようなわからないような作品。

 2021年度からKAATの芸術監督に就任した長塚圭史さんの作品はわりとよく観に行く方だし、出演者のひとりである成河さんの芝居が大好きなので、神奈川県には何の縁もない身ではあるけれど、無条件にチケットを購入し、開幕してすぐにアフタートーク付きの回を観に行った。

 まず作品として、シンプルに楽しい。開演してすぐに「神奈川県」役の成河さんが前口上を述べる。軽妙な語り口に客席が沸く。コンテナのようなボックスからキャラクターが登場し、音楽が奏でられ、瞬く間に「演劇を観にきた劇場の客席」から劇中へ取り込まれていく。超特急というほど性急でない、快速くらいの心地いい速度で物語の世界へ連れて行かれる。

 一度散り散りになった三蔵法師一行が、神奈川県の各所を巡りながら再会していくという展開なのだが、そこに県内で最近起きた出来事だったり、再会した沙悟浄がウーバーイーツでバイトしてたりなどという「今」の要素や、県外の人間からするとマイナーであろう地域のエピソードが織り込まれる。もちろん知らなくても楽しめた。楽しめたけれど、地域に馴染んだ県民だったらより細部までしゃぶり尽くして楽しめただろうな、と思うと「いーなーー神奈川県民!」という羨ましさが湧き上がってきた。

 この羨ましさには後ろ向きな意味はないし、雑念として観劇を邪魔することは全くなかった。終演後のトークでも触れられていた、公共劇場で行われる企画の主旨として大成功しているという証だと思う。ライブパフォーマンスである演劇は、元来「作り手と受け手が同じ空間にいる」ことがその魅力の大部分であると言っても過言ではない。それはコロナ禍によって、舞台芸術が配信で愛好家の元に届けられるようになった今でも変わりない。時間や場所や経済的な制約を超えて触れられるようになったのは間違いなく喜ばしいことではあるけれど、やはり作り手としても、環境をほぼ完全に理想に近い状態にコントロールできる劇場で作品を届けたいという想いもあるだろう。

 だからこの作品が普段は巡ることのない場所に向こうからやってきて、「自分の目の前で繰り広げられるパフォーマンス」を楽しめるーーしかもそれが地域に根ざした題材を吸収しているということに、なんて素晴らしいツアーなんだろうと興奮してしまった。ずるい! これは「その地域で劇場に足を運んだ人」こそが余すことなく楽しめるやつ! 私の住んでるところでもそういうのやってほしい! ……ということで、記事タイトルの「うちにも長塚圭史ください!」につながる。(そもそも居住している県に芸術監督がついているような公共劇場がない気がする……)

 もちろん企画に賛同を得るには苦労もあり、各地の劇場に最初に打診した際には「どうせ気まぐれに来て終わりなんでしょ。公演一回じゃ観劇文化は育たないよね」的な反応もあったそうだ。私自身も、普段演劇に触れない友人から「どこでやってるの? ていうか毎日やってるの?」「何を観たらいいのかわからない」「チケット高いし観たいと思ったら売り切れてる」といったことを言われることが多い。

 社会全体に余裕があるわけでもない今、演劇はすごく小さなマーケットで回している状態にあって、業界にいる人間もそこに対する危機感は強いという話もよく聞かれる。いくら敷居を下げても、元々興味のない層に劇場に足を運んで貰うのはそう簡単な話ではない、ということはありつつも、現状を打開するための種まきとして全力で応援したい、練り上げられた企画だと思った。


 そんな企画意図云々はさておいても、冒頭でも書いたとおり、とにかくシンプルな演劇的楽しさに溢れた作品であることは声を大にして伝えたい。ミニマムなセットが瞬時に色々な場所に変わること。音楽や効果音の大部分を担う、角銅真実さんの演奏。(初めて触れたけど、この演奏だけでもお釣りがくるくらいすごかった。見たこともない楽器を次々に奏でる様が楽しい)その演奏に入れ替わり立ち替わり加わったり、影絵を操ったり、セット転換までしながら、魅力的なキャラクターを演じる役者の力。「そこに物理的にはないもの」を想像力で楽しめる演劇の醍醐味を、難しくなく体験できる幸せな時間だった。(打楽器をふんだんに用いた演奏シーンのせいか、以前成河さんが出演していた、新国立劇場での『アジア温泉』でも感じた、雑多で開かれた祝祭的な雰囲気を思い出した)

 この作品を成河さんが「えんげき」と表していたけど、全くその通り、特別なハレの場として身構えずに軽い気持ちで楽しめる。慣れ親しんだ人には魅力でもある哲学的なテーマだったり、感情を根幹から揺さぶるドラマチックなストーリーが、そうでない人には敷居が高く感じてしまうこともあるだろう。そういった意味でも作品としての気楽さ、ツアーとしての身軽さは評価されて欲しいし、後に続く企画が出てきて欲しいなと願う。

 ツアーはKAAT・川崎公演を終え、それ以降相模原・大和・厚木、小田原、横須賀と巡り、3月19日に千秋楽を迎える。絶対楽しいと思うから、どこかタイミングが合えば観て欲しいと身近な人に宣伝しまくってるけど、果たしてどれくらい響いているか。

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▼公演概要

KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト 第一弾
冒険者たち  ~JOURNEY TO THE WEST~』

KAAT 神奈川芸術劇場 中ホール 2/8〜10
川崎市アートセンター アルテリオ小劇場 2/19.20
杜のホールはしもと ホール 2/23
大和市文化創造拠点シリウス1階 芸術文化ホール メインホール 2/26.27
厚木市文化会館  小ホール 3/4.5
小田原三の丸ホール 小ホール 3/12.13
ヨコスカ・ベイサイド・ポケット 3/19

上演台本・演出:長塚圭史(原作:呉承恩西遊記』)
共同演出:大澤遊 
音楽・演奏:角銅真実
舞台美術・衣裳:長峰麻貴
ヘアメイク:冨沢ノボル
照明:上山真輝
音響:星野大輔 
演出助手:神野真理亜
舞台監督:竹井祐樹
出演:柄本時生 菅原永二 佐々木春香 長塚圭史 成河

https://www.kaat.jp/d/bokenshatachi

2021年のエンタメ記録


●1月
イリュージョニスト日生劇場
二兎社「ザ・空気ver3」@東京芸術劇場
ポーの一族(梅芸版)(配信)

●2月
イキウメ「金輪町コレクション」甲プロ@東京芸術劇場
石岡瑛子展@東京都現代美術館
オスロ新国立劇場
劇団チョコレートケーキ「帰還不能点」@東京芸術劇場
ヤクザと家族 The Family(映画)

●3月
劇団☆新感線「月影花之丞大逆転」@東京建物ブリリアホール
ほんとうのハウンド警部@シアターコクーン
ワンツーワークス「ジレンマジレンマ」@赤坂レッドシアター
こまつ座「日本人のへそ」@新宿サザンシアター
子午線の祀り世田谷パブリックシアター
あの頃。(映画)
すばらしき世界(映画)

●4月
スリル・ミー(田代・新納/成河・福士/松岡・山崎)@東京芸術劇場
坂本裕二朗読劇「不帰の初恋、海老名SA」@よみうり大手町ホール
宝塚歌劇団 雪組公演
 『f f f -フォルティッシッシモ-』『シルクロード~盗賊と宝石~』(配信)

●5月
東京ゴッドファーザーズ新国立劇場
メリリー・ウィー・ロール・アロング@新国立劇場
スリル・ミー(成河・福士)@高崎芸術劇場
スリル・ミー トークライブ(配信)
スリル・ミー(田代・新納/成河・福士/松岡・山崎)(配信)
井上芳雄byMYSELF スペシャルライブ
 20th Anniversary Festival!~急遽生配信!裏切らない芳雄4時間フェス~(配信)
東大寺コンサート 狂言&音楽 第二夜(TV)

●6月
野田地図「フェイクスピア」@東京芸術劇場
イキウメ「外の道」@シアタートラム
首切り王子と愚かな女@パルコ劇場
キネマの天地@新国立劇場

●7月
野田地図「フェイクスピア」@新歌舞伎座
森フォレ@世田谷パブリックシアター
劇団チョコレートケーキ「一九一一年」@シアタートラム
ワンツーワークス「29万の雫」@赤坂レッドシアター
衛生@赤坂ACTシアター
唐人街探偵(映画)
モータルコンバット(映画)

●8月
王家の紋章@帝国劇場
湊横濱荒狗挽歌~新粧、三人吉三。@KAAT
ティーファクトリー「4」@あうるすぽっと
スポンジボブ・ミュージカル(配信)
ミュージカル「ゴヤGOYA-」(TV)
VIVO(映画)
るろうに剣心 最終章 The Beginning(映画)

●9月
検察側の証人世田谷パブリックシアター
Le Fils 息子@東京芸術劇場
孤狼の血LEVEL2(映画)

●10月
モーリス・ベジャール・バレエ団
 『ボレロ』『ブレルとバルバラ』『人はいつでも夢想する』@東京文化会館
劇団☆新感線「狐晴明九尾狩」@赤坂ACTシアター/配信
LIVE TOUR V6 groove@幕張メッセ
Dステ12th「TRUMP」REVERSE(配信)
新ディズニープラス セレブレーションナイト(配信)
燃えよ剣(映画)
騙し絵の牙(映画)
火花(映画)


●11月
野田地図番外公演「THE BEE」@東京芸術劇場
イロアセル@新国立劇場
二兎社「鴎外の怪談」@東京芸術劇場
ナイロン100℃「イモンドの勝負」@本多劇場
タイムダイバー ディノアライブプレミアム@IHIステージアラウンド東京
LIVE TOUR V6 groove(配信)
DUNE/デューン 砂の惑星(映画)
ザ・ファブル(映画)
南山の部長たち(映画)

●12月
風姿花伝プロデュース「ダウト」@シアター風姿花伝
トークイベント「戯曲翻訳の話をしよう」@すみだパーク SASAYA CAFE
ストーリー・オブ・マイ・ライフ(平方・田代/牧島・太田)@よみうり大手町ホール
海王星@パルコ劇場
パラドックス定数「vitalsigns」@サンモールスタジオ
Noism「境界」@東京芸術劇場
ローマ帝国三島由紀夫@シアター風姿花伝

劇団☆新感線 プロデューサースペシャルトークショー 『新舞台芸術と映像の可能性について』メモ その2

こちらの続きです。

【中】音声に関しても頑張ったと聞いていますが
【金】キャストにはそれぞれピンマイク、バンドの音も個別に拾えるようにして全部で60チャンネルほどになっている。マイクでは拾えない、足音や衣擦れの音は映画でそうするのと同じように、映像化の段階で音を加えている。

中井さんからの「それをハリウッドでやったんですよね!」というフリに続き、ジパングパンクを素材にしたハリウッドのスタジオスタッフの映像が流れました。

【中】なぜハリウッドだったんですか
【金】ポジティブに言うと「やってみたかったから」。ネガディブな要素としては、いのうえさんの作る作品がどんどんハリウッドライクになってきたので、日本で作業する意味がなくなってきた。例えば日本だと衣裳をばさーってやる時にこういう音を入れたい、と言っても「そんな音しないだろ」って言われてしまうところを、向こうのスタッフは「こういうのもあるけど」と提案をくれたりする。実際に作品を手掛けたディレクターはとても優秀なんですが、やはり国内には年功序列的なところがあって、表に出てこれない、とかそういう事情もあったり…
【中】ハリウッドで作るとやっぱり仕上がりは違うんですか
【金】全然違いますね。格段に違う。向こうのスタッフの刺激を受けて、こっちのスタッフも引きずられるようにアイディアが出てきたりする。

【中】細川さんは本公演とゲキシネを見比べてみていかがですか
【細】舞台とは別物、という認識ではいるけど、やはり日本では環境的な事情で、映像化されても家で大音量では観られないですよね。それを映画館で体感できるのはいい。

 

【中】キャストの方は「今日は撮影日だ!」と意識されたりするんでしょうか
【細】中にはナーバスになる人もいる。それは無理もなくて、二階席の後ろの人にも届くように組み立ててる演技を、映像用に間近で撮影されるんだから演技プランが崩れてしまう、という理屈もわかる。
あとは同一日2公演で撮影するので、昼噛んだ台詞は夜公演では噛めない!とか…よく「(どちらも間違えてしまって)アフレコとかないんですか」「ないよ!」というやり取りをしたりする。
【金】キャストにはピンマイクがついているので袖での台詞じゃない声も入るんですが、古田さんが「ちっ噛んじゃった…やる気なくなった」って言ったのを拾ったりして…それ入ってるんですけどー!て思ったりする(笑)

 

【中】DVDでは副音声が収録されてますよね
【金】あれもうやりたくないんですよねーやりたい放題過ぎて(笑)テレビなら放送事故だろってくらい沈黙が続いてるところとか、大体NGで切ってるところですから。
【細】公演が3時間とかになると、話すことなくなるんだよね。

 

【中】なぜ劇団☆新感線がここまで人気になったと思われますか
【細】シンプルに言うと、面白い!と支持してくれる人が増えたおかげ。個人的に劇団の動員数については昔から「東京3万人・大阪1万人限界説」を唱えていて、演劇ブームの頃の夢の遊民社、第三舞台もそのあたりでひとつの限界を迎えたと思っている。
新感線では、純粋な劇団公演ではないけど2002年の『天保十二年のシェイクスピア』で、それを超えられるかもという手ごたえを感じ、その延長線上にあったのが『吉原御免状』。客演俳優によるスターシステムが成功のポイントだった。ただ、それも「根っこに演劇を持った人」に限る。堤真一上川隆也堺雅人天海祐希…単に有名人が出れば動員数が伸びる訳では絶対にない。
【中】劇団員に魅力的な人が育ってきているせいもありますよね
【細】高田聖子さん、粟根まことさん、橋本じゅんさんなどのいのうえイズムを体現する劇団員の存在は大きい。また、古田は外部の俳優から信頼がとても厚く、劇団のスポークスマン的存在になっていて、「この人がやっているなら信頼できる」という理由で人を呼べる存在。いのうえさん自身が演技もやる人だし、役者の前で全部自分がやって見せる演出方法だというのも信頼される要因でしょうね。

 

【中】差し障りなければ…今(客演を)狙っている人は?
【細】それ相当差し障りあるなー(笑)
【中】このへん、とかだけでも…たとえば歌舞伎界はどうですか!市川染五郎さんとやられた時も「こんなに格好いいんだ!」って驚いたので!あとは初舞台の方とか…初は厳しいか??
【細】初めてだから(だめ)ってこともないんだけど、いのうえ次第かな。 

【中】どういう人を狙っていってるんですか
【細】あのね!『蛮幽鬼』の時なんかは「よく堺くんなんて押さえられたね~どんな手使ってるの~」とか言われたけど、2年半前から動いてるからね!その当時はゴールデンスランバーで主演するなんて思いもよらないからね!新感線じゃないけど『サイケデリック・ペイン』の時も「よく綾野剛くんを…」て言われたけど、企画書見せて回った時は誰も知らなかったくらいだし、それくらい前からオファーしてる訳!それを先見の明、とか言う人もいるけど、「運」です「運」!(笑)

(…と、突然大興奮する細川さんに客席が大ウケ。売れた後から押さえにいってるんじゃなくて、独自の嗅覚でリサーチ&一種の賭けをしていると主張したかった様子)

 

【中】だって、出演したいという俳優さん達はいっぱいいて、その中で「この人はいる/いらない」というジャッジをする訳じゃないですか。それはどういった観点から?
【細】強いて言うなら「2年半後の新感線の公演に乗せて、輝いてくれるか」という感じ。ちなみに3回客演で出ると準劇団員扱いになります(笑)天海祐希松雪泰子堤真一生田斗真森田剛は準劇団員だそうで、勝地涼は回数は満たしてるけど認められていないそうです…笑)
あとはその時かけようとしている作品に、マッチングする役があるかないか。ジパングパンクでの村井(國夫)さん、麿(赤兒)さんなんかはまさにそれ。北大路(欣也)さん、平幹二郎さんも、ダメ元で打診してみたらOKを頂いて。
【中】そんな名だたる大御所達が出演してくれる理由ってなんだと思います?
【細】それは古田の繋がりもひとつだし、過去の作品の映像がたくさんあるので、どんなものかイメージしやすい、というのもあると思う。
【中】逆に断られたという大御所はいたりするんですか
【細】うーん…いない…と思います

 

第二弾はここまで!おそらく次で質疑応答まで含め、すべて終わる予定です。

劇団☆新感線 プロデューサースペシャルトークショー 『新舞台芸術と映像の可能性について』メモ その1

昨日、文化学園大学の学園祭で行われたトークショーに参加してきました。登壇者はエグゼクティブプロデューサーの細川展裕さん、ゲキ×シネ映像版プロデューサーの金沢尚信さん、司会進行は演劇好きで知られる中井美穂さん。新感線ファンには嬉しい、密度の濃い一時間でした! 

まずは中井さんがおひとりで登場。「新感線の舞台を生で観たことある方?ゲキシネを観たことがある方?」と会場に質問したところ、大体7割くらいが舞台観劇済み、ゲキシネはもう少し多い感じだったよう。そして新感線の紹介映像を流した後に細川さん・金沢さんが登壇。劇団の概要を中井さんが簡単に説明しながら軽くお二方と絡んだり。

劇団名が「発足当時の劇団員が、実家に帰省する時に新幹線を利用していた」ことに由来しているのはファンの間では周知の事実だと思うのですが、開演直前のベルが実際に新大阪駅の新幹線ホームで勝手に録音してきたものだ、というエピソードは初めて知りました!

 

ここから先はメモをもとにしたトークの要約ですが、すごーーーーく長くなりそうなので分割で投稿します。

中井さん(以下【中】):細川さんは一体何をしてる人ですか
細川EP(以下【細】):一般的に言うと「枠組み作り」。公演の時期や劇場、キャスト、どんなストーリーにするか(主に主宰・演出のいのうえひでのりさんと)相談して決定した後は、初日の打ち上げで乾杯の音頭を取ったり司会進行したり、千秋楽の打ち上げで司会進行したり…(笑)
(ちなみに制作チームは全部で6~7名体制とのこと。勝手のわかっている精鋭なので枠組みを決めた後は安心して任せており、渡した後は暇なんです…と仰ってました)

 

【中】公演の仕込みはいつ頃から行うものなんでしょう
【細】理想は2年半~3年くらい先行して進める感じ。例えば『ジパングパンク』は公演の3年半前に東急文化村から「今度渋谷に新しく劇場を開くので(シアターオーブのことですね)何か一緒にできないか」という話を受けた。その頃はちょうど『薔薇とサムライ』が終わって頃で2011年に『髑髏城の七人』 を上演することが決まっていたので、音モノのRシリーズ(シリーズ説明はこちらを参照がいいかなあ…という話を下北沢の焼き鳥屋でした。普段から色々な現場で情報収集して(細川さんはパトロールと言っているとのこと)、(客演で)誰が出たがってるとか拾っておくのが大事だと思ってます。

 

【中】客演は豪華な顔ぶれですが、そのあたりはどうやって進めてるんですか
【細】特にマニュアルがある訳ではないので、その時の流れです。ジパングパンクなら、地球ゴージャスの公演に出てた三浦春馬くんが良かったね、とかいう話をした流れだったり。最初この人と想定して進めてても、1年半前に「やっぱないな~」ってなることもある。
最近では稽古に2ヶ月・公演2ヶ月必要になっており、劇団外の俳優さんに4ヶ月公演のために空けてください、となると調整も大変。(ドラマの仕事は3ヶ月1クールで動くので、2クール諦めてもらうことになるためだそう)
仕込みの期間が長いので、他の劇団と比較するとオファーは早いと思っている。2年半は大河ドラマよりも早い。でも一番早いのは蜷川(幸雄)さん。もう自分が生きてる間は全部押さえてるんじゃないかっていうくらい(笑)

【中】やはりキャスティングに関しては大変なんですね
【細】客演だと相手側の問題もあるので…たとえば三浦春馬くんだと、オファーした当時は事務所から「舞台(地球ゴージャス客演)出演が初めてなので、それが終わって本人のモチベーションがどうかを確認してから返答したい」という返事だった。女優さんは結婚も絡んだりするのでどうしても流動的要素はありますね。
俳優の怪我が起きてしまったり、という場合も大変だけど…急遽代役を探す時などは不思議と呼び込むものがある。当たってみた俳優がたまたまスケジュール空いてるよ、とかね。


話題は変わって、ここからは金沢P(以下【金】)が会話に加わり「ゲキ×シネ」パートに。まずはゲキシネ紹介映像が流れます。『蜉蝣峠』が中心だったかな?テキストで原田眞人監督のコメントが入って個人的にテンションが上がった私…)映像後、中井さんが「すごいじゃないですか!」と話を振ったところ、細川さんが間髪入れずに「(『メタルマクベス』の)松たか子ちゃんすごいね!」と返したため、客席から笑いが漏れる一幕も。

 

【金】(ゲキシネが生まれた背景は)当時はVHSからDVDへの移行期だったんですが、勿論ファン向けに作られているので公演を観た人しか買っていかないという状況でした。もっと新感線の魅力が広まってほしいという思いから、どうすればいいのか考えたところ「演劇の魅力であるライブ感、目の前で俳優が演じているという醍醐味を劇場と同じように体感するには、映画館での上映がぴったり」という結論にたどり着いた。

それまでも演劇の映像化はなくはなかったけど「(カメラが遠くて)ちっさ!」という構成が通例だった。観客の視点誘導に長けた、いのうえさんの演出がついた新感線なら、映画のような映像化に耐えられるという思いもあった。

【中】ゲキシネの企画を聞いて、細川さんはどう思われました?
【細】いいんじゃない、と思いました。というのも、自分は舞台とは全く別物だと考えているし、「上映」である以上はゲキシネは映画であって、その被写体が新感線作品の出演者であると考えているから。それに東京・大阪以外の地方、海外に広めるためのツールにもなるし、実際今もその役割を果たしている。

 

【中】2004年の『アカドクロ』『アオドクロ』から始まり、次回の『蒼の乱』まで入れると13作品になりますが、カメラを複数台入れての撮影を伴う負担もあるでしょうし、機材のために席もつぶれますよね?どう詰めていったんですか
【金】最初は完全に手さぐり。舞台の撮影に関してはある程度既存のキットみたいなものがあったけど、10年前のデジタルカメラでは照度ひとつとっても撮影が厳しかった。撮影機材の発展と、ノウハウの蓄積ですね。
(『ジパングパンク』では機材を撮影前日の昼公演で調整し、撮影は同一日昼夜2公演&カメラ20台前後、スタッフは80~90名を要したとのこと)
プリプロダクションとして脚本・稽古の段階から入念に打合せを行う。昔は監督がファイナルカットプロとかでやっていた編集作業も、今では映画編集に携わる人間が加わったりしている。演出家がどこを見せたいか、という意向を汲むことも大切。

 

【中】確かに舞台は自分の好きなところやキャストを見られるのが魅力のひとつでもあるので、映像にすると視点が強制的に演出意図に沿うことになりますよね
【金】最初はそれが理由でファンの方に怒られたりしたこともあった。でも話の本筋に焦点を合わせることが優先されるべきだと思うので、ご容赦頂きたいです…

 中井さんが「新感線はまた端で面白いことしてる人がいますもんね、あれをなぜ切る!って気持ち、わかる気がする」と応え「橋本じゅんさんとか橋本じゅんさんとかね…」と合わせる細川さん。みんな大好き看板役者・古田新太は、後ろ向いてる時は変な顔したりしているそうです。

【金】いのうえさんが映像の編集に立ち会って、じゅんさんが余計なことしている部分を「ここいらない」って言ったりすることもありますね。そもそもゲキシネだけで完結するものではないと思っているので、ぜひそこを入口に公演を観に来て頂きたいです。

 

さすがに長いので、続きはメモその2にて。これでメモの半分いってないくらいですが、あまり日を空けずに投稿したいと思います。

2014年の観劇記録

 

4月

蒼の乱 @シアターオーブ

マニラ瑞穂記 @新国立劇場 小劇場

(犬は鎖につなぐべからず~岸田國士一幕劇コレクション~ ※映像)

パン屋文六の思案~続・岸田國士一幕劇コレクション~ @青山円形劇場

5月

ロンサム・ウェスト @新国立劇場 小劇場

殺風景 @シアターコクーン

 6月

赤鬼@青山円形劇場

昔の日々 @日生劇場

 7月

太陽2068 @シアターコクーン

8月

窓に映るエレジー @CBGKシブゲキ!!

ラストフラワーズ @赤坂ACTシアター

9月

ヒストリーボーイズ @世田谷パブリックシアター

火のようにさみしい姉がいて @シアターコクーン

背信 @東京芸術劇場 シアターイース

10月

小指の思い出 @東京芸術劇場 プレイハウス

社長吸血記 @本多劇場