ひとんちの庭

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劇団☆新感線 プロデューサースペシャルトークショー 『新舞台芸術と映像の可能性について』メモ その2

こちらの続きです。

【中】音声に関しても頑張ったと聞いていますが
【金】キャストにはそれぞれピンマイク、バンドの音も個別に拾えるようにして全部で60チャンネルほどになっている。マイクでは拾えない、足音や衣擦れの音は映画でそうするのと同じように、映像化の段階で音を加えている。

中井さんからの「それをハリウッドでやったんですよね!」というフリに続き、ジパングパンクを素材にしたハリウッドのスタジオスタッフの映像が流れました。

【中】なぜハリウッドだったんですか
【金】ポジティブに言うと「やってみたかったから」。ネガディブな要素としては、いのうえさんの作る作品がどんどんハリウッドライクになってきたので、日本で作業する意味がなくなってきた。例えば日本だと衣裳をばさーってやる時にこういう音を入れたい、と言っても「そんな音しないだろ」って言われてしまうところを、向こうのスタッフは「こういうのもあるけど」と提案をくれたりする。実際に作品を手掛けたディレクターはとても優秀なんですが、やはり国内には年功序列的なところがあって、表に出てこれない、とかそういう事情もあったり…
【中】ハリウッドで作るとやっぱり仕上がりは違うんですか
【金】全然違いますね。格段に違う。向こうのスタッフの刺激を受けて、こっちのスタッフも引きずられるようにアイディアが出てきたりする。

【中】細川さんは本公演とゲキシネを見比べてみていかがですか
【細】舞台とは別物、という認識ではいるけど、やはり日本では環境的な事情で、映像化されても家で大音量では観られないですよね。それを映画館で体感できるのはいい。

 

【中】キャストの方は「今日は撮影日だ!」と意識されたりするんでしょうか
【細】中にはナーバスになる人もいる。それは無理もなくて、二階席の後ろの人にも届くように組み立ててる演技を、映像用に間近で撮影されるんだから演技プランが崩れてしまう、という理屈もわかる。
あとは同一日2公演で撮影するので、昼噛んだ台詞は夜公演では噛めない!とか…よく「(どちらも間違えてしまって)アフレコとかないんですか」「ないよ!」というやり取りをしたりする。
【金】キャストにはピンマイクがついているので袖での台詞じゃない声も入るんですが、古田さんが「ちっ噛んじゃった…やる気なくなった」って言ったのを拾ったりして…それ入ってるんですけどー!て思ったりする(笑)

 

【中】DVDでは副音声が収録されてますよね
【金】あれもうやりたくないんですよねーやりたい放題過ぎて(笑)テレビなら放送事故だろってくらい沈黙が続いてるところとか、大体NGで切ってるところですから。
【細】公演が3時間とかになると、話すことなくなるんだよね。

 

【中】なぜ劇団☆新感線がここまで人気になったと思われますか
【細】シンプルに言うと、面白い!と支持してくれる人が増えたおかげ。個人的に劇団の動員数については昔から「東京3万人・大阪1万人限界説」を唱えていて、演劇ブームの頃の夢の遊民社、第三舞台もそのあたりでひとつの限界を迎えたと思っている。
新感線では、純粋な劇団公演ではないけど2002年の『天保十二年のシェイクスピア』で、それを超えられるかもという手ごたえを感じ、その延長線上にあったのが『吉原御免状』。客演俳優によるスターシステムが成功のポイントだった。ただ、それも「根っこに演劇を持った人」に限る。堤真一上川隆也堺雅人天海祐希…単に有名人が出れば動員数が伸びる訳では絶対にない。
【中】劇団員に魅力的な人が育ってきているせいもありますよね
【細】高田聖子さん、粟根まことさん、橋本じゅんさんなどのいのうえイズムを体現する劇団員の存在は大きい。また、古田は外部の俳優から信頼がとても厚く、劇団のスポークスマン的存在になっていて、「この人がやっているなら信頼できる」という理由で人を呼べる存在。いのうえさん自身が演技もやる人だし、役者の前で全部自分がやって見せる演出方法だというのも信頼される要因でしょうね。

 

【中】差し障りなければ…今(客演を)狙っている人は?
【細】それ相当差し障りあるなー(笑)
【中】このへん、とかだけでも…たとえば歌舞伎界はどうですか!市川染五郎さんとやられた時も「こんなに格好いいんだ!」って驚いたので!あとは初舞台の方とか…初は厳しいか??
【細】初めてだから(だめ)ってこともないんだけど、いのうえ次第かな。 

【中】どういう人を狙っていってるんですか
【細】あのね!『蛮幽鬼』の時なんかは「よく堺くんなんて押さえられたね~どんな手使ってるの~」とか言われたけど、2年半前から動いてるからね!その当時はゴールデンスランバーで主演するなんて思いもよらないからね!新感線じゃないけど『サイケデリック・ペイン』の時も「よく綾野剛くんを…」て言われたけど、企画書見せて回った時は誰も知らなかったくらいだし、それくらい前からオファーしてる訳!それを先見の明、とか言う人もいるけど、「運」です「運」!(笑)

(…と、突然大興奮する細川さんに客席が大ウケ。売れた後から押さえにいってるんじゃなくて、独自の嗅覚でリサーチ&一種の賭けをしていると主張したかった様子)

 

【中】だって、出演したいという俳優さん達はいっぱいいて、その中で「この人はいる/いらない」というジャッジをする訳じゃないですか。それはどういった観点から?
【細】強いて言うなら「2年半後の新感線の公演に乗せて、輝いてくれるか」という感じ。ちなみに3回客演で出ると準劇団員扱いになります(笑)天海祐希松雪泰子堤真一生田斗真森田剛は準劇団員だそうで、勝地涼は回数は満たしてるけど認められていないそうです…笑)
あとはその時かけようとしている作品に、マッチングする役があるかないか。ジパングパンクでの村井(國夫)さん、麿(赤兒)さんなんかはまさにそれ。北大路(欣也)さん、平幹二郎さんも、ダメ元で打診してみたらOKを頂いて。
【中】そんな名だたる大御所達が出演してくれる理由ってなんだと思います?
【細】それは古田の繋がりもひとつだし、過去の作品の映像がたくさんあるので、どんなものかイメージしやすい、というのもあると思う。
【中】逆に断られたという大御所はいたりするんですか
【細】うーん…いない…と思います

 

第二弾はここまで!おそらく次で質疑応答まで含め、すべて終わる予定です。